気候変動対策、ベゾスに頼ってていいの? - ギズモード・ジャパン
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お金だけ出して、口は出さないでってあまりにも無茶ぶりですかね。
先月、世界でもっともリッチな人が、気候危機を食い止めるためのたたかいに100億ドル(約1兆1000億円)を寄付すると発表しました。
米国時間の2月17日に、Amazon(アマゾン)の最高経営責任者 (CEO) であるジェフ・ベゾスは、Instagramへの投稿で新ファンド(Bezos Earth Fund)を立ち上げました。
その中でベゾスはこう記しています。
気候変動は地球にとって最大の脅威です。わたしは、他の人々と協力して、すでに知られている方法を普及させながら、気候変動が地球全体に与える破壊的な影響とたたかう新しい方法を探していきたいと思っています。
気候変動対策に1兆1000億円。使い道は謎に包まれたまま
いまのところ、詳細は明らかにされていません。基金をなにに、どれくらいの勢いで使うのかについて、彼は言及しませんでした。とはいえ、1兆1000億円は紛れもなく大金です(100ドル札を積んだらどれくらいの高さになるんだろう?)。
The AtlanticのRobinson Meyerが書いているように、この額は、米国の慈善家たちが気候変動のために寄付している金額の実質2倍!もしもこの大金を10年間で均等に使うと、ベゾスはアメリカ最大の気候慈善家になることでしょう。まるで、気候変動対策のためにクリスマスが早く来たみたい!
富豪に頼ることで心配される政治的影響力
でも、マジレスすると、ばかばかしい話です。
いや、巨額の投資をしなくても気候危機に立ち向かえると思ってるわけじゃありません。大規模な危機に見合った気候変動対策のためには、社会を根本的につくりなおさなければいけないということです。送電網、インフラ、食料システムなどを新しいものに置き換える必要があって、そのすべてにコストがかかります。また、1300億ドル(14兆円超)の純資産を持つベゾスから、その資金の一部を得るべきではないとも思っていません。ただ、ベゾスがその使い方を決めるべきだとは思えないんです。
1980年代のはじめ以降、アメリカの上位0.00025%を占める400人の富豪たちが占める富の割合は3倍になりました。これは気候にとって問題です。なぜかというと、一部の非常に裕福な人々が自家用ジェットによる旅行やヨットに使うお金を持っているからというだけじゃなくて、富が集中すると、(ここ重要→)政治への影響力も集中してしまうから。
最悪のタイプの億万長者は、富と権力を使って政治家を買収し、地球を犠牲に利益を得るためのロビー活動をします。たとえば、コーク兄弟とマーサー一族は、石油とガス産業から得る利益を守るために、何十億ドルも費やしてきました。
彼らと比べると、ベゾスはまるで聖人みたいです。でも、Eartherの同僚であるBrian Kahnが説明していますが、アマゾンは彼らの企業にもサービスを提供しています。ということは、ベゾスもそこから利益を得ているんですね。そういう企業の存在を脅かしたり、怒らせたりしないことが、ベゾスにとって最大の財務的利益になるんです。
これは、ベゾスが実質的には排出量を削減せず、ときに恐ろしく不公正でもある多くのカーボン・オフセット・プログラムに投資することを意味するのかもしれません。もしかすると、大きなスケールでは機能しないといわれている二酸化炭素の回収・貯留技術に投資する可能性もあります。
ひょっとすると、太陽エネルギーをブロックする地球工学技術に投資する可能性も。汚染産業はこの種の解決策を好む傾向があるんですよね。なんでかというと、理論的には、とてつもなく大きな社会的リスクがあるにもかかわらず、現在のビジネスモデルを変えずにカーボンニュートラルを実現できるから。
気候変動対策は、富豪ではなく国民に委ねられるべき
しかし、気候危機と戦うためにこういった技術を使うべきだと主張する気候科学者たちでさえ、有効な気候変動対策は化石燃料の採掘と利用を最速でやめることだと主張しています。でも、ベゾスの基金に、気候科学者の声を聞く義務はありません。
仮に、ベゾスが資金を提供したとしても、気候変動対策を億万長者に頼るのは良くない考えだと思います。たとえば、ベゾスから資金提供を受けてしまうと、会社の許可なく「気候変動対策が必要だ」と声をあげた職員らに対して「クビにするぞ」と脅すアマゾンを批判できなくなるかもしれませんよね。
誤解しないでほしいのですが、政府だって科学者や労働者の話を聞いているわけではありません。それでも政府内にいる民主的に選出されたリーダーの中には、国と地球の利益を守るために気候変動対策資金をどのように使うべきかを規制できる人たちがいます。リーダーがわたしたちの意に沿わない使い方をしているなら、圧力をかけることができます。もしもわたしたちの声に応えなければ、他の候補者をたてることもできます。リーダーたちは、最終的に有権者への責任を負っているんですから。
でも、これとは逆に、気候基金がどれだけの資金を注いだとしても、ベゾスの役割はわたしたちのリーダーではありません。彼の役割は、アマゾンのCEOです。彼が責任を負うべき相手は株主であって、わたしたちではありません。
ベゾスの気候基金は、「億万長者は富を使って世界に大きな影響を与えることができるようにすべき」という考えを助長するものです。もしも彼が本当に民主主義を信じているのなら、富の力が民主主義の域を超えて、地球が本当に必要としているものを決定することがいかに間違っているかを知るべきです。
寄付してもらうよりも税金納めてもらった方がよくね?
でも幸運なことに、わたしたちにはベゾスから何十億ドルもの資金を得て、気候変動対策にあてるために使える別のメカニズムがあります。それは「税金」です。1950年代のアメリカにおける最高税率は、90%を超えていました。なんと、現在の2倍以上です。ベゾス個人に加えて、アマゾンにも課税することができるというのに、アメリカは今のところなぜか及び腰です。
もしもベゾスとアマゾンにもっと課税できれば、気候変動対策やその他の重要な投資に100億ドル(1兆1000億円)をはるかに超える資金を得られます。しかも、億万長者に大きな影響力を与えることもないなんて、一石二鳥ですよね。
ベゾスとアマゾンのような富豪や多国籍大企業からもっと多額の税金を徴収できるようにするのも重要ですが、アマゾンの場合だと、2018年の二酸化炭素排出量は4440万トンと、デンマークと同じくらい。もしもアマゾンが自社と、業務提携している企業のカーボンフットプリントを減らすことができれば、それだけでもかなり大きいと思います。あくまでも最大の気候変動対策は、二酸化炭素を排出しないことなのですから。
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March 11, 2020 at 07:00PM
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